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テキスタイルスタジオ村上
津軽裂織伝統工芸士・村上あさ子さん、始(はじめ)さん

色合いと手ざわりファン魅了

「北前船」にルーツ「津軽裂織」

夫婦で伝承、黙々と布を織る

津軽では裂織(さきおり)を「サクリ」と呼ぶ。「裂織の本」(八田尚子著、晶文社)に、(財)稽古館館長などを歴任した民俗研究家・田中忠三郎さん(2013年没)の解説が載っている。「津軽では裂織のことを〝サグリ〟といいますが、サキオリがなまってサグリになったのではないかと思うのです」。田中さんの見立てでは「ヒバや杉の木をナタで裂いて、家のまわりの雪よけとして並べるサクリ板」も同じ語源。「サクリ」「サグリ」の手ざわりがイメージできる。

青森県のホームページに、本県の伝統工芸品として「津軽裂織」が紹介されている。「裂かれた布のささくれた風合いが独特の手ざわりを生み、古着の色の組み合わせによる時を経た深みのある色合い…」。裂織ファンを魅了する手ざわりと色合いだ。江戸中期以降、津軽の海岸線では、日本海交易の北前船で運ばれてくる古い木綿布が貴重で、その大切な布を長持ちさせるための工夫が裂織。漁師や農民の仕事着や日常着としてつくられ、雪国の寒さから人々を守った。

あさ子さんは1978(昭和53)年、東京テキスタイル研究所基礎科を卒業し、青森市で創作活動を始めた。「最初は、津軽裂織があることを知らなかった」という。「先に南部裂織が注目されてきたが、自分は津軽でやっているし、織物としての裂織という意識」で創作活動を続けた。96(平成8)年、高田に工房を開設し、4年後には裂織教室スタート。県が津軽裂織を伝統工芸品として指定したのは2005(平成17)年。翌年、あさ子さんが、3年後に始さんが青森県津軽裂織伝統工芸士に認定された。

青森県指定伝統工芸品「津軽裂織」となり、青森県のお土産品を生み出す過程で、裂織の新しい出逢いが始まった。「裂織+青森ヒバ」で「青森ヒバ林檎針刺し」、津軽塗とのコラボで「津軽塗持ち手クラッチバッグ」、エゾシカ革を使い「エゾシカ革名刺入れ」、あけび蔓と組み合わせて「裂織ブローチ」などなど。「いろいろな素材、工芸品と組み合わせることによって裂織の良さがいろいろな人に伝えられる」と、あさ子さんも取り組みへの手ごたえを感じている。

始さんは、「青っぽい」色の作品を好んで作る。「中学校の時のキャンプで見た海を思い出しながら」作品にするという。「みんなが『海を見ているようだ』と言ってくれる。それがうれしい」と満面の笑み。あさ子さんは最近、ネットショップでの購入者の感想が励みになっている。「『すごくかわいい』『手ざわりがいい』など、みんな大事に使ってくれている様子が伝わってくる」「私たちが作っているのは、日常使うものなので、使いやすくて、いつも使いたいなと思うものを作っていきたい。そういうものを使っていただくことによって、毎日、なんかいい気分だなと思ってもらえればいいなと思って作っている」。購入者の満足げな表情を思い浮かべながら、二人が黙々と布を織る音がきょうも工房に響く。

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